アントレプレナーシップ教育とは?
小学校・中学校の実践事例と文部科学省の動向
今回インタビューに答えてくださった平井さんは「どこに放り出されても自立して生きていける力」とお答えになりました。そして、目指すことは「価値創造」。そのための学びが「アントレプレナーシップ教育」と続けて語られています。
アントレプレナーシップ教育とは、単なる起業家の育成ではありません。こども達が自発的に新しい価値を生み出し、変化の激しい時代をたくましく生き抜くための力を育む教育のことです。平井さんは、その学びを「自分で考える」「他者を知る」「価値を創る」「行動する」「結果を受け止める」そして「振り返り、もう一度挑戦する」という「循環」の中で体感するプログラムを推進されています。
文部科学省のアントレプレナーシップ推進大使であり、日本における早期起業家教育の数少ない専門家として25年にわたり最前線で活躍してこられた平井さんに、アントレプレナーシップ教育の現状や海外との比較、そして学校での実践事例などについてお伺いしました。国内外で起業経験を持つ現役の「アントレプレナー」でもある平井さんだからこそ語れる、「アントレプレナーシップ教育」の「イマココ」をご紹介します。
【インタビュー】文部科学省アントレプレナーシップ推進大使
平井 由紀子(ひらい ゆきこ)さん

博士(早期起業家教育) / 株式会社セルフウイング 代表取締役 / 文部科学省アントレプレナーシップ推進大使
ご専門:早期起業家教育 / アントレプレナーシップ教育 / キャリア教育
ご経歴:長年にわたり「早期起業家教育(アントレプレナーシップ教育)」の普及・研究に尽力。文部科学省のアントレプレナーシップ推進大使として、大学だけでなく小・中・高校における教育プログラムの導入や教員研修を全国で牽引。キッザニア(KCJ GROUP)や日本政策金融公庫との連携による「高校生ビジネスプラングランプリ」などの実践事例も多数。
教育現場での実務支援経験と、国の推進施策の両方の視点をあわせ持つ「早期起業家教育」の第一人者。本コラムでは、こども達の主体性や「生きる力」を引き出すアントレプレナーシップ教育の本質と、明日から使える現場目線の実践ヒントを、豊富な体験談とともにインタビュー形式で解説します。
「アントレプレナーシップ教育とは?」海外の常識と「生きる力」の育成
―教育現場で「アントレプレナーシップ教育」への関心が高まっています。長年、早期起業家教育の研究や実践に尽力されてきた平井さんは、なぜこの教育を始められたのでしょうか?
私は、もともと外資系企業で新規事業の立ち上げを担当していました。そこで海外の起業家たちに接するうちに、「何があっても諦めず、自立して価値を創り出す、このマインドセットの源泉はどこにあるのだろう?」という疑問を持ったのです。さらに、そのマインドセットを育むことができないだろうか、とも考えました。それが、起業家教育に足を踏み入れたきっかけです。
―当時の日本の状況はどのような感じだったのでしょうか?
1990年代後半の日本は「起業の気運」こそありましたが、実際に挑戦するプレイヤーが圧倒的に少なく、起業をしても、廃業率が開業率を上回る状態でした。なので、そういった状況を変える必要がある、と感じましたね。
―想いはあっても、成り立たない状況だったのですね。そこから、なぜ、「早期起業家教育」に着目されたのですか?
まずは「やり抜く力」などのマインドセット、つまりは「アントレプレナーシップ」が定着していないことが問題だなと思いました。そして、そういえば海外では何歳から起業家教育をやっているのかな、と思って調べたんです。そうすると、結構早い時期からアントレプレナーシップ教育が始まっていて。そこで気づいたのは、音楽やスポーツと同じで、やっぱりこどもの頃から慣れ親しんだ方が、将来それを使いこなせる確率が圧倒的に高いだろう、ということでした。そのために、まずはこども達を対象にしようと考えました。

―こどもを対象とした起業家教育、当時はとても珍しかったのではないでしょうか。
そうだと思います。特に国内ではあまり前例もなく知見も少なかったことから、自分も学ぶ必要があると思い、社会人として大学院に入り研究と実践を重ねました。
―前例がない中での研究や実践は大変だったことと思います。当時、「こどもの起業家教育」について、周りはどのような反応でしたか?
新しいことなので、苦戦しました(笑)。「こどもにお金儲けを教えるなんて…」という声を頂戴したり…。そういったこともあり、やっぱり、学術的なバックグラウンドを持って信頼を得ることが大切だなと思い、2011年に日本で初めて早期起業家教育の研究で学術博士号を取得したんです。
―そうやって一歩一歩進まれたのですね。今、平井さんが目指すところは何でしょうか。
目指すところ…そうですね、私は、会社を作る技術を教えたいわけではありません。不確実な時代に何があっても自立して生きていける「マインド」を、日本のこども達にも伝えたいと思っています。そのためのアントレプレナーシップ教育です。
〔出典:文部科学省「アントレプレナーシップ教育ポータル」〕
―平井さんご自身も、実は海外で教育事業を展開されている「アントレプレナー」ですね。そのご経験から、実際に事業を展開するために、どのような力やスキルが大切だと思われますか?
これまでに、ベトナム ダナン市で日本の教育を取り入れた幼稚園の設立と併せて、こども達に向けた起業家教育も広めてきました。こういった取り組みが、新しい教育の機会を届けたとしてダナン市政府から表彰をしていただくなど、ありがたい評価も頂戴しています。
このように起業をする上で大切だと感じたのは、「既存のものに付加価値をつける力」つまりは「価値創造」です。私は、この力がアントレプレナーシップの本質だと考えています。これは、国を問わず共通することだと思います。
―アントレプレナーシップの本質ですね。例えば、こども達にそのことを伝えるとしたら、どのようにお話しになりますか?
こども達に伝えるためには、なるべくシンプルな方が良いので、例えば、「自分たちが知恵や工夫を加えることで、300円で仕入れたものを600円の価値として認めてもらえたとすれば、その差の部分に自分たちが生み出した価値があるんだよ」と説明しています。ここで伝えたいことの本質は、お金儲けのノウハウではなく、「自分の知恵や努力で新しい価値を生み出し、社会に喜んでもらう体験」を積むことにあります。
― なるほど!単にお金を稼ぐということではなく、自分の知恵で価値を生み出すプロセスそのものを学ぶわけですね。
そこが大切なんだと思っています。こういう「価値創造」が、いわゆる「生きる力」にもなるのではないでしょうか。
―アントレプレナーシップ教育は、これからの時代に必要な「生きる力」へと結びついているのでしょうか?
幼少期の教育とその後の成長との関係については、ヘックマンらによるペリー就学前プロジェクト[1]の研究などから、認知能力だけでは説明できない行動特性や自己統制などが、その後の人生に重要な意味を持つことが示されています。ただし、これはアントレプレナーシップ教育そのものの効果を示した研究ではありません。私は長年の実践と研究から、挑戦すること、他者と協働すること、試行錯誤すること、自ら意思決定することなどを経験できるアントレプレナーシップ教育は、こうした力を育む教育とも親和性が高いと考えています。
―アントレプレナーシップと「生きる力」は確かにつながっていそうで、本当に大切ですね。平井さんは文部科学省の「アントレプレナーシップ推進大使」として日本全国を回られていますが、海外の教育プログラムと比較した際、日本のアントレプレナーシップ教育の現状はどのように映っていますか?
日本と海外では、アントレプレナーシップ教育導入の「社会的背景」が根本的に違うと考えています。海外の一部では、アントレプレナーシップを起業のための教育から、価値創造のためのコンピテンシーへと広く捉えているようです。
例えばフィンランドでは、社会・経済環境の大きな変化を経験する中で教育改革を進め、現在では『働く力とアントレプレナーシップ』を、教科を横断して育成するコンピテンシーの一つとして位置づけています。ベトナムでも、政府による学生の起業・イノベーション支援が進められており、大学等を中心にアントレプレナーシップ教育への関心が高まっています。私たちセルフウイングも、ベトナムで9歳頃から大学・社会人までをつなぐ継続的なアントレプレナーシップ教育の構築に取り組んできました。
― 国によって背景は異なりますが、色々な国でアントレプレナーシップを将来に必要な力として育もうとする動きが広がっているのですね。今や日本も転換期ということですが、これまでの日本はどのような状況だったのでしょうか?
かつての日本は、戦後の復興期をはじめ、多くの人が新しい事業や仕事を生み出してきた、非常にアントレプレナーシップに富んだ国だったと思います。一方、社会が成長し、安定したキャリアモデルが長く続いたことで、「自分で新しいものを作る」という選択肢を身近に感じにくくなった面もあるのではないでしょうか。
でも、私がこれまで接してきた日本のこども達は、「決めたことをやり切る力」がとても高いと感じています。一方で、失敗を恐れて「最初の一歩」が出にくい場面も見えてきました。だから、学校や社会で「安全に失敗し、一歩を踏み出せる環境」を整えてあげることこそが、大人の大きな役割なのではないでしょうか。
日本におけるアントレプレナーシップ:文部科学省の動向と小学校・中学校の「実践事例」
―現在日本では、アントレプレナーシップ教育はどのような位置づけになっているのでしょうか?「文部科学省アントレプレナーシップ推進大使」の視点から教えてください。
日本も大きな転換期を迎えていて、アントレプレナーシップ教育の位置づけも変化してきていますね。例えば、2022年に政府が「スタートアップ育成5か年計画」という成長戦略を掲げました。この戦略では、アントレプレナーシップの裾野を広げようという強い意志が感じられます。文部科学省では、アントレプレナーシップを「新たな価値を生み出していく精神」と捉え、起業家育成だけを目的とするのではなく、自ら課題を見つけ、他者と協働しながら解決に挑戦する知識・能力・態度を育てる教育として推進しています。また、教育現場で活用するための枠組みとして、EUのEntreCompを参考にした『日本版EntreComp v1』も公表されています。
(提供)株式会社セルフウイング(出所)文部科学省「日本版EntreComp v1」を元に(株)セルフウイングが再編集し、図を作成。
―アントレプレナーシップ教育の拡大がいわれる中で、学校現場では「総合的な学習(探究)の時間」に関心が高まっています。例えば、アントレプレナーシップ教育は「探究学習」のフレームワークとして活用できるのでしょうか?
もちろん、探究学習のフレームワークでアントレプレナーシップ教育を行うことは可能です。教育現場の先生方は本当に多忙です。だからこそ、アントレプレナーシップ教育のために新しい時間を作るのではなく、総合的な学習(探究)の時間を活用するのが一番効果的だと考えています。キャリア教育や探究学習など、既存の活動とアントレプレナーシップ教育は全くの別物ではありません。実は先生方が日々やっている探究活動がアントレプレナーシップ教育に紐づいていることも多く、我々のような専門チームがそこを整理して差し上げることが大切だと思っています。
―「今ある時間を活用できる」と分かれば、先生方も心強いですね!実際に、先生方にはどのような形で教育プログラムを提供されているのですか?
実は、私たちが学校現場に提供しているプログラムは、小学校・中学校そして未就学児を対象にする時でも、プログラムの「骨格」はすべて一貫して同じなんです。この骨格は、一連の価値創造プロセスをこども自身が体験することで成り立っています。
1.会社を作る
2.市場・顧客を知る
3.価値を考える
4.チームで意思決定する
5.実際に行動する
6.結果を数字で確認する
7.振り返って次の行動につなげる
(株式会社セルフウイング資料より抜粋)
―共通の「骨格」で幅広い年齢のこども達が体験していることに驚きました!では、この骨格をもとに、「小学校」ではどのような実践が行われているのでしょうか?
小学校の実践では、この骨格に沿って「会社を作ろう」というワークショップを行います。
例えば、小学校低学年であれば、ターゲットを身近な「家族」にして、「家族に、いま困っていることをインタビューしてみる」という小さな一歩からスタートします。身近な課題を起点に、それを解決するアイデアを形にしていくのです。
最後の「決算」では、算数の教科教育とも紐づけながら、売上の結果という客観的な数字を通して、こども達自身の深い気づきへと繋げていきます。

―家族へのインタビューから決算まで、小学生のうちから実践を経験するのですね。自分が小学生ならドキドキしそうです。では、中学生になると、どのようにステップアップしていくのでしょうか?
中学校では、先生方から「地域」や「商店街」との連携など、具体的なリクエストを多く頂戴することが多いため、先ほどお示しした骨格をもとに、それぞれのご要望に合わせてプログラムを柔軟にカスタマイズしていきます。
これは小学生・中学生に共通なのですが、将来全員が社長になることは目指してはいません。こども達が自分のキャリアを考えるうえで「自分で何か新たな価値を創って、それでビジネスをやってみるという道もあるんだな」という選択肢に自ら気づくことを大切にしています。
指導者(教員)の役割:正解を教えない「伴走者」としての関わり方
―学校でアントレプレナーシップ教育を行う際、指導する先生にはどのような役割が求められますか?
一番大切なのは、「教えることをちょっと我慢して、一歩引いてメンター(伴走者)になること」だと思います。なんといっても先生方は「教える」ことのプロフェッショナル。どうしても正解へ導こうとされます。でも、それではこども達の「深い気づき」へ結びつきにくくなります。そこで、セルフウイングでは、先生方に「一歩引く」方法をマニュアル化して、お渡ししています。ただ、マニュアルだけではよくわからないと思いますので、1年目は講師を派遣して手厚くサポートし、2年目、3年目は先生方が主となってアントレプレナーシップ教育を実践されるように支援しています。

―先生が伴走者になる。これは授業中の「声かけ」のあり方にも直接繋がってきますね。こども達の自由な発想を引き出すためのコツはありますか?
実はこの先生方にお渡ししているマニュアルには、アントレプレナーシップ教育で活かせる声掛けの「言い換えのフレーズ」を載せています。例えば、大人が「もっとこうすればいいよ」と答えを押し付けるのではなく、「他にどんな考え方がありそう?」「時間までにやり切るには、どうしたらいいと思う?」と問いかけて、こども達自身に気づかせることが大切です。
―先生方の言葉が少し変わるだけで、こども達が主役になれますね!他にも学校へ向けたお取り組みはされているのですか?
まだこれからなのですが、アントレプレナーシップ教育に携わる先生方のネットワークを作りたい、と思っています。よく、「先生が異動したらアントレプレナーシップ教育をできる人がその学校にいなくなる」という、いわゆる「属人化」のお悩みを聞きます。
ただ、実は私は、属人化推進派で、むしろアントレプレナーシップ教育ができる先生の専門性を大切にして、その専門性を持った先生の輪を広げていくことが重要だと思っています。先生方がどこに異動しても、誇りを持って次の学校でアントレプレナーシップ教育に取り組める、そしてその事例を共有する場があり、さらに良い教育をみんなで考える。そういう環境があれば理想ですよね。なので、今は、先生自身のモチベーションを高めるネットワークやコミュニティの仕組みを作ろうとがんばっています。
社会とつながる体験プログラム:キッザニアの連携事例
―教室でのアントレプレナーシップの学びをさらに豊かなものにするために、キッザニアができることはありますか?
教室で考えるだけではわかりづらい「リアルな社会の仕組み」を、実感として体験できる場を提供することだと思います。
キッザニアでは初めて出会う人同士で仕事を成し遂げることがあると思います。その中で、さまざまな考えやアイデアに触れられますよね!同じように社会には、自分とは異なる考えを持つ人がたくさんいます。自分が「良いアイデアだ!」と思っても、相手が価値を感じてくれなければ受け入れてもらえない――そうした社会の現実を知ることは、アントレプレナーシップの最初の一歩になります。
また、仕事をすることで対価が生まれ、その対価が社会の中を循環していく仕組みを体感できるのもキッザニアならではの価値です。こうしたリアルな体験があるからこそ、教室での学びがより身近で、豊かなものになっていくのではないでしょうか。
―平井さんには、キッザニア甲子園やキッザニア東京で開催された日本政策金融公庫の「高校生ビジネスプラングランプリ」との連携プログラムで、企画段階から深く関わっていただきました。小学生から高校生までのこども達が参加したプログラムでしたが、平井さんのご感想などお伺いできますか?
小学生から高校生まで、参加したこども達の熱量が素晴らしく、私にとっても非常に印象的なプログラムでした。特に心に残っているのは、こども達が大人に向かって自分の考えを発表した後の表情です。年齢に関わらず、「自分の考えが社会に届いた」「自分たちにも価値を創れる」という手応えを得て、とても晴れやかな表情をしていました。また、この実感こそが「自己効力感」につながっていくのだと感じます。
イベントダイジェスト動画(YouTube)
―最後に、アントレプレナーシップ教育という新しい取り組みに対して、戸惑いや悩みを抱えている全国の先生方にメッセージをお願いします。
今、日本の社会では、AIの急速な進化によって、これまで人が担ってきた仕事の一部が代替・再編され、求められる能力や職業そのものが大きく変化し始めています。これからのこども達にとって、『良い学校を卒業して企業に所属すれば将来は安泰』という従来型のキャリアモデルだけでは、将来を考えにくい時代になっています。
こういった激変の時代を生きるこども達に、「自ら価値を生み出す力」を持たせて社会へ送り出すことは、私たち大人の大きな使命だと感じています。
―大人の使命、ですね。
何となく大上段な感じに聞こえますね(笑)。でも、実は難しく考える必要はないと思っています。アントレプレナーシップは、特別な学びではなく、「新しい時代を生きるためのリベラルアーツ(教養)」だと考えています。だから、まずそれを身につけることが重要だと思います。もちろん安全への配慮は大前提ですが、大人の常識だけで『それは無理』『失敗するからやめなさい』と最初から可能性を閉じるのではなく、こども自身が考え、試し、失敗から学べる余白を作る。それがアントレプレナーシップ教育では大切だと感じています。
―「失敗から学べる余白」、大事だと思います。
そうですね。そこで、先生方と一緒に取り組みたいことは、授業の間だけ、教えるのを少し待っていただき、彼らの挑戦を見守る「伴走者」になることです。これは、プロフェッショナルである先生であればあるほど難しいかもしれません…ただ、こども達は、大人が思うよりもはるかにたくましく、自ら学び、伸びていく力を持っていると思っています。
キッザニアのような体験の場も活用しながら、こども達が「どこに放り出されても大丈夫な力」を育み、自分の人生のハンドルを自ら握って、自分の翼で羽ばたいていけるよう、一緒に温かく応援していきましょう!

よくある質問(FAQ)
Q1.アントレプレナーシップというとキャリア教育の一環という見方もありますが、実際にその二つは同じものでしょうか?
短い言葉で表現するのは難しいご質問ですが、キャリア教育が、自分と社会・職業との関係を考えながらキャリア形成につなげていく教育だとすれば、アントレプレナーシップ教育では、そこからさらに、自ら機会や課題を見つけ、価値を創り出し、実際に行動してみることを特に重視する学びだと考えます。両者は対立するものではなく、非常に親和性の高い教育だと考えています。
Q2.アントレプレナーシップ教育は小学生には早すぎませんか?
25年以上実践・研究してきた私自身は、発達段階に合わせた方法であれば、早い段階からこうした経験に触れることには大きな意味があると考えています。もちろん、小学生に難しい『起業の技術』や『ビジネスモデル』を教えることではありません。例えば「日常の小さな不便に気づく」「どうすれば良くなるかアイデアを出す」「誰かに喜んでもらう」といった経験から始めることができます。こうした発達段階に合わせたアプローチであれば、小学生から取り組むことにも大きな意味があると考えています。
Q3.新しく授業の時間を設ける余裕がないのですが……。
本当にそうですよね。今、先生方は大変ご多忙な状態だと思います。そこに新しく「アントレ用のコマを増やしましょう!」と言われたら、自分だったら「ちょっと厳しいかも…」と言いたくなりそうです。
そこで、新しくアントレプレナーシップ教育のために時間を作るのではなく、『今ある総合的な学習(探究)の時間』を使うのが、一番現実的でおすすめです。また、アントレプレナーシップ教育は、算数(簡単な決算)や国語(プレゼンテーション)、社会(地域との連携)といった既存の教科教育とも深く結びついています。なので、教科教育とつなげて実施する、という方法もあります。いずれにしても、先生方の負担を増やすことなく、日々の授業の延長として気軽に取り組んでいただければと思いますし、そうできる仕組みを、私たちも全力でサポートしています。
まとめ:これからの時代を生き抜く力をこども達へ
平井さんのお話では、「アントレプレナーシップ教育とは、起業の仕方を教える教育ではなく、自分の持っているもの、周囲にある資源、人との違いを生かしながら、新しい価値を生み出し、行動し、その結果から学ぶ教育」だと語られました。そして、大人は「こども達の挑戦を見守る伴走者」であることが期待されています。そうすることで、こども達は自らの「生きる力」で成長していくのだと考えられます。

職業・社会体験施設であるキッザニアでは、平井さんが提唱する「自分で選び、行動し、やり切る」プロセスを、本格的な環境下で体験できます。さらに、教室での探究活動や事前学習と組み合わせることで、こども達の中に「自分ならできる」という自己効力感を芽生えさせる最高の機会となるでしょう。
こども達が自分の翼で羽ばたいていけるよう、キッザニアも応援しています。ぜひ、校外学習などの機会にキッザニアを訪れてみてください。
- アントレプレナーシップ教育の本質は、お金儲けのノウハウではなく、自分の知恵や努力で新しい価値を生み出し社会に喜んでもらう体験そのものにある。
- 決めたことをやり切る力は抜群だが失敗を恐れて「最初の一歩」が出にくい日本のこども達には、学校や社会が「安全に失敗し、一歩を踏み出せる環境」を整えることが大人の大きな役割。
- 教育プログラム内で行う会社づくりの最大の目的は、将来社長にさせることではなく、自分たちで新しい価値を生み出し、意思決定し、行動し、その結果から学ぶ一連のプロセスを経験すること。
- 算数とも紐づく「決算(客観的な数字)」をそのまま見せることで、こども達が主体的に納得して次のアイデアを考える振り返りが生まれる。
- 教えるプロである先生が、授業の間だけ「教えるのを少し待って見守る伴走者」に徹するマインドセットを持つことで、こども達自身が本来持っているたくましく自ら伸びていく力が引き出される。
資料ダウンロード

- ジェームズ・J・ヘックマン『幼児教育の経済学』古草秀子(訳)、東洋経済新報社、2015年
