2025年1月31日
キッザニア福岡で行われた高校生向けプログラム
コスモポリタンキャンパス「福岡テクノロジー人材創生塾2024~未来を拓く宇宙コース~」
福岡県内21の高校から、53名の生徒が参加し、最終日にはチームごとにプレゼンテーションを行いました。
KDDI株式会社 先端技術企画本部 シニアエキスパート 市村周一氏
コースの目的や全体像などを共有した上で、参加者のきん張感を和らげ、参加意欲を高めるためのアイスブレイク「NASAゲーム」を行いました。その後、市村周一先生による講演「宇宙ビジネスへの挑戦」 にて宇宙ビジネスとはどのようなものか、はば広く学び、今後のプログラムにおける土台を作りました。
株式会社QPS研究所 代表取締役社長 CEO 大西 俊輔氏
オガワ機工株式会社 取締役副社長 伊藤慎二氏("e-SET"宇宙プロジェクトチームメンバー)
福岡県を中心とする九州の豊かなエコシステムと小型衛星を使った観測技術の活用で可能性が拡がる宇宙ビジネス分野について、連けいしあう2つの会社の方にそれぞれの観点からお話しいただきました。最先たんのSAR衛星技術や小型衛星製作プロセスをクイズやチームでのワークを交えながら楽しく学びました。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター 主任研究開発員 濱本 昂氏
株式会社Tellus コーポレート部 PRチーム 菅谷 智洋氏
株式会社Fusic 先進技術部門 エンジニア 石橋 龍氏
オーシャンソリューションテクノロジー株式会社 代表取締役 水上 陽介氏
DAY 1での宇宙ビジネスの全体像理解、DAY 2での衛星開発・製造技術に関する学習をふまえ、データ利活用の実せんの現場におられる4名を招いてお話しいただきました。宇宙という場で取得したデータや技術が社会においてどのように活用されているのかをくわしく知り、より宇宙ビジネスが身近な存在になりました。
DAY 4はキッザニア福岡を飛び出し、九州工業大学で宇宙工学に関する講義を受けたり、実際の衛星や試験センターを見学したりするフィールドワークを行いました。見学終りょう後は、最終日のプレゼン発表に向けて宇宙技術を利用した課題解決のアイデアソンを大学生・院生のメンターの助けを得て行いました。
最終日は、プログラムの集大成としてDAY4で考案したアイデアをチームごとにプレゼンしました。全8チームの発表を受け、講師の方々による講評やそれぞれに合ったチーム賞の発表を行いました。修りょう証の授よも行われ、最後は記念さつえいでプログラムをしめくくりました。
サステナブルな社会を実現するため、宇宙技術を使ったアイデアを考え発表しました。
海洋ごみ問題解決のため、①海にうかぶごみを宇宙から見つける技術②宇宙空間を利用して海洋ごみの処理を行う技術の2点を考案しました。①では、プラスチックを検出するセンサーを人工衛星につけたり、衛星画像を活用し、けんだく物質のう度をはかったりすることで、ごみが多い場所を発見します。②では、宇宙の過こくなかん境を利用したり太陽光を利用したりすることを想定しています。
食りょう問題を解決するため、日本の農業発展に着目しアイデアを考案しました。まずAIとうさい衛星を使い日本の限界集落など過そ地域を見つけだします。次に、実際に農業をする際SAR衛星の画像データを使い、畑の状きょうを簡単にはあくできるようにしつつStarlinkを用いてスマホで衛星データを見つけるようにします。また、衛星とロボットを連動させることでスマホやVRゴーグルからロボット操作を可能にすることができます。
宇宙ごみ問題を解決するため、人工衛星を再利用する「チャージ衛星」を考案しました。このシステムでは、まずレーダーで宇宙ごみになりそうな人工衛星を探さくします。次に、その衛星に近づきチャージをすることで、燃料切れで使えなくなることがなくなり半永久的に人工衛星が使えると考えました。
大気お染問題を解決するためのシステムを考案しました。まず、一番の大気お染の要因であるPM2.5ののう度を衛星を用いて測定します。次に、国際法によってのう度の規定をします。そののう度が規定をこえた国にはばいしょう金をせい求し、工場からのPM2.5のはい出をよく制します。また、基準をこえた国は公表することで世界全体の意識が高まるのではないかと考えました。
海面上しょうの課題を解決するために、①ちょう小型地球観測衛星もう(衛星コンステレーション)で世界中をかん視し、い反ばっ採の取りしまりや温室効果ガスの測定などに活かす ②太陽からの光をさえぎりつつ発電、それを地球に送信し地球の火力発電所などの数を減らす という2つを考案しました。これらを実現するためにも、まだまだ技術の探究が必要です。
山火事問題を解決するため、かん境パラメーター(熱、しつ度、水分量、風向き)をモニタリングできる衛星を考案しました。この衛星に必要な要素としては、「低き道」「ちょう小型」「Starlink」「CubeSat」が挙げられます。この衛星で得られたデータを使うことで、注意かん起などの情報提供に活かせると考えました。
まちの治安改善のため、不しんな人の判別または犯人の追せきにより犯罪のよく止力になる人工衛星を考案しました。これは、人一人を認識できるほどの高解像度の画像を連続して地上に送信するものです。警備会社・警察と連けいし、これを利用することで、犯人のたいほをじん速かつ確実なものにすることができます。情報提供によって利益も生まれるため持続的な事業になり、SDGs11番「住み続けられるまちづくりを」につながると考えました。
遠かく医りょうを発展させるため、過そ地への低き道衛星の打ち上げを考案しました。これにより高速なインターネット通信の実現、ドローンによるしんりょう・薬の配送が可能になります。このアイデアには、Starlinkのような衛星の大量生産技術・低き道衛星のき道整備技術など様々な技術が必要になります。また、合わせて高れい者向けパソコン教室の機会も設けられたらと考えました。
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター 主任研究開発員 濱本 昂氏
みなさん今回の発表・準備おつかれ様でした。よく調べ、アイデアも考えこまれて作られていたと思います。どのチームも課題に対して非常に具体的な解決策、宇宙や人工衛星の利用方法を考えられているなと大変おどろきました。
プレゼンを聞き、チームごとに特色がちがっているところが面白かったです。全く新しい宇宙技術の話をしているチーム、今あるものをかけ合わせて課題解決につなげようとしているチーム、世の中の規制やルールを変えようとしているチームと、はば広いアプローチの仕方がありました。これは、JAXAや宇宙開発の仕事でも同じです。当然特定の技術や研究をつきつめて行くような人もいますが、それ以外にも宇宙技術を使うためにサービスを創ったりビジネスにしたり、国際的な国の法律ルールを変えたり色んな取り組みをする人がいます。それぞれ向き不向きや必要な能力、それぞれの関心も全く変わってきます。宇宙自体でいうと、やはり宇宙飛行士や宇宙探査など宇宙自体を追求していくフロンティアでもありますが、その一方で、宇宙は単なる場所や手段でしかないという見方もできます。
これから、それぞれ色々な勉強・研究・仕事をすると思いますが、ぜひみなさんが好きな領域・関心のある分野から、宇宙の技術を使ったり宇宙の開発を実際にされたりしていただけるとうれしいです。
九州工業大学 革新的宇宙利用実証ラボラトリー 教授 北村 健太郎氏
みなさん5日間おつかれ様でした。今回とりあげた8つのテーマは、今、実際に宇宙技術で解決しようとしている人がいるようなものを設定しています。
九工大は留学生として、と上国から来る人が多くいますが、衛星を使って色々やりたいという中で面白いものがあったので、しょうかいします。アフリカから来ていた学生が言ったのは、「家ちくのかん視をしたい」ということです。アフリカは広いので、家ちくを放し飼いにしていると、何十キロもどこかにいってしまい居場所がわからなくなってしまうからというのが理由です。また、湖が現れたり消えたりするため、衛星で今、湖がどこにあるか見たいというのもありました。
このようなアイデアは面白いですが、課題が最初にあります。ミッション=課題を達成していくために必要な技術は何か、そのシステムをデザインして、それを実際に設計するモノづくりしていく、そういうプロセスで成り立ちます。今回みなさんには、それを模ぎしたような発想で課題解決のアイデアをだしてもらう流れを体験していただきました。
この考え方は宇宙以外でも応用できるやり方です。ぜひ今後何か解決すべき問題がでたときに、今回のプロセスを思い出してやってみてほしいと思います。そして、これを機に少しでも宇宙分野に興味をもっていただけたらうれしいです。
「コスモポリタンキャンパス」はこれからも正解のない時代をたくましく生きる力をこども達に育んでもらえるよう、プログラムをじっししていきます。
共催:福岡県
後援:一般社団法人 九州経済連合会
協力:宇宙航空研究開発機構(JAXA) /
オーシャンソリューションテクノロジー(株) /
九州工業大学革新的宇宙利用実証ラボラトリー / (株)QPS研究所 /
KDDI(株) / (株)Tellus / (株)Fusic